2001.10.23 「坂道」のコメントページを追加しました |
|
坂道なんて, 日本中に無数にある。
とにかく 道路に高低差があれば, それが "坂" なのだから。
東京は 関東平野の真中にあって 多摩地方を除けば 高い山はないから,
坂道の数は 少ないだろうと 単純に考えやすいのだが,
面積だけは どこの都市にもヒケを取らないし, 数メートル程度の高低差は
いたるところにあるので, 坂の数が多くても不思議はないのだ。
しかし “名前の付いた坂”というのは どこにでもある というものではない。
坂道に名前が付いて それが後世に残されるには,
あるヒマ人(失礼)が 東京の坂の数を数えたら, 500近い数になったという。
どうやって数えたのか詳しくは知らないが, 東京の坂については
参考書がたくさんあるので, 比較的 坂のありかは知りやすいのだろう。
参考書としては, たとえば
『江戸東京坂道事典』 石川悌二 著 新人物往来社
という本は, 非常に詳しく 充実しているので,
坂道マニアにとってのバイブルになっているようだが,
なにしろ 9,800円 という値段なので 気軽に買うことはできない。
(ちなみに 私はこの本が欲しいのだが, 買い込むだけの勇気がない。)
坂名標 |
私の知る限り, 東京で最も坂の多い区 (正確には "坂名標がたくさん立っている区") は 港区と文京区で, 存在を確認した坂の数は それぞれ数十か所ある。 次に多いのが 新宿区と千代田区で 港区の半分程度。 品川区・大田区・渋谷区・目黒区・台東区・北区 などは 10か所前後 (あるいは それ以下)と, かなり差が大きい。
熱心な区は 名前のついた坂はほとんど全部 坂名標を立てていると思われるのに対して, 不熱心な区は 地図にも載っている ような有名な坂でさえ 坂名標を出していない。 たとえば 豊島区などは, 名前のついた坂がたくさんあるのに 坂名標がみられるのは ごく一部 (それも 非常に古い標識)だけである。 中野区・杉並区なども 無関心派である。
当然 坂の少ない地域は 坂名標も少ない。たとえば 中央区というのは
江戸時代以前はほとんど東京湾の一部だったものを その後埋立によって
地面ができていった地域である。
そのため 全体に平坦で, 坂らしい坂はない。
江東区・江戸川区・葛飾区・墨田区・足立区
なども 荒川・中川・隅田川などに挟まれた平坦な地域で 坂はあまりないようで,
当然 坂名標も見られない。
横浜というところは, 江戸末期に 諸外国の圧力に屈した幕府が
開港したのがはじまり。それまでは さびしい漁村だった。
したがって 街としての歴史が始まるのは 明治維新以降である。
外国人の居留地になった 桜木町・関内地区は, もともと遠浅の海だったところを
埋め立てた場所なので, ここには坂はなく, 明治になってから 外国人の
居館が建てられた 山手地区(港の見える丘公園のある高台) が中心になる。
坂の数は 横浜全体で 30ほどが確認されているが, すべてに坂名標があるかどうかは
未確認。
坂名標の形 |
| | | |
| |
| | |
こうやって比較してみると, 他にはどんな形の坂名標があるのか 知りたくなってくる。
東京〜横浜 以外の地域にも 坂名標があるのだろうか。
5年近く住んでいた関西では かなりあちこち歩き回ったのだが,
大阪や京都や神戸に 坂名標を見た記憶はない。
その当時は 坂名標なんて あまり関心がなかったせいだろうか。
インターネットで検索したりしてみると, 大阪・京都にも いくつかの坂が見つかるが,
数は多くない。
『関西の坂道』なんて本はないのだろうか。
坂名の由来 |
坂名の由来 | 例 |
坂に面して屋敷があった |
鳥居坂(大名鳥井氏の屋敷) 三べ坂(岡部筑前守・阿部摂津守・渡部丹後守の"三部"があった) ゼームス坂 (明治時代, 英国人 ジョン・M・ジェームスの邸があった) |
坂に面して寺などがあった |
魚籃坂(魚籃観音を安置した魚籃寺がある) 動坂 (江戸時代 "赤目不動尊"があった) |
周囲の環境から |
幽霊坂 (樹木がうっそうとして 昼でも凄寂だったため 俗に幽霊坂と唱えた) 狸坂 (人をばかすたぬきが出没した) 蛇坂 (付近の藪から蛇の出ることがあったため) |
周辺の過去の状況から |
異人坂 (明治時代, 大学のお雇い外国人教師の官舎があり よく外国人が通った) 薬園坂 (江戸幕府の御薬園[小石川植物園の前身]があった) |
伝説・伝承による |
逢坂 (美しい娘と恋仲になり この坂で再び逢った) おいと坂 (北条時頼が難病にかかり, ここの井戸水を使用したら全治した。雄井戸坂) |
地形から |
歌坂 ([うとう](海鳥の一種)の口ばしに似た地形であるから) 胸突坂 (坂がけわしく 胸を突くようにしなければ上れないから) |
安直な坂名 |
急坂 (急な坂だから。大田区に実際にある) 新坂 (明治維新の後 新たに開かれた道だから。あちこちにある) |
個別の坂道の写真は, たくさんあるので, 別項(坂道コレクション)を参照してください。 (まだ 整理中なので, 準備できたものから 徐々に掲載)
|