[2002-7-18] 「矢切の渡し」のコメントページを追加しました |
矢切の渡し 石本美由紀 作詩 船村徹 作曲 細川たかし 歌 「つれて逃げてよ ・・・」 「ついておいでよ ・・・」 夕ぐれの雨が降る 矢切の渡し 親のこゝろに そむいてすごし 恋に 生きたい 二人です ・・・ (碑文の写し) |
ここは 東京都葛飾区。東京の北東の端にあたり, 川を越えれば 千葉県松戸市である。
江戸川は このあたりで 川幅(堤防から堤防まで)が およそ 500メートルある。
東京側と 千葉県側のそれぞれに200メートルずつの河原がひろがっていて,
東京側は 運動公園が続いている。
公園を横切ると 「矢切の渡し」 の船着場。
明治以降になると 徐々に橋が架けられ 渡し船は廃止されていったが, 一部の渡しは 意外に
遅くまで使われていた。
隅田川では 「佃の渡し」 や 「汐入の渡し」 などが 戦後まで運航を続けており,
それぞれ 昭和39年と昭和41年を最後に廃止された。
現在 東京近辺で 定期的に運航されている渡しは, ここ 矢切の渡し のみとなっている。
船着場近くに掲げられた 葛飾区による案内板に 次のような説明が書かれている。
船着場には いろいろな注意事項が 乱雑に掲示されている。 曰く,
船に乗ったら ガイドがつくと思っている人が多いのだろうか。
また 「音楽はない」 とわざわざ書いているのは, 細川たかしの『矢切の渡し』が聞きたいと
リクエストする人がいるのかもしれない。
急に雨が降ってきた時や, 大勢の客が集まってきて 急ぐ必要がある場合は, モーター(船外機)をつけて航行することがあるのは 仕方のないことだが, “手漕ぎの船に乗れる”と期待してやって来た観光客にしてみれば 「話が違うじゃないか」 ということで 苦情が出ることがあるのだろう。
そんなことを 客と何度もやりとりした結果が このたくさんの掲示になっているのだろう。 船頭さんの 苦労が想像できる。
渡しの運行は 天気まかせ。 船着場付近に案内所があるわけでもないので, 『松戸側に 旗が上がっていれば 運行中』という約束になっている という。
このあたりは 川幅 500メートルほどで, そのうち 水の流れているのは
およそ100メートル。結構距離がある。水量は多く かなり深そうだ。
船に乗る。料金は 大人 100円, 子ども 50円。
距離あたりの料金としては 非常に高いのだが,
直接 対岸に行く手段は ほかにないことを考えれば, ずいぶん安い とも言える。
なにしろ, このあたりは 江戸川を渡る橋が少なく, 上流は 葛飾橋 まで 2km強,
下流は 市川橋 まで 約3kmも離れている。
「最大搭載人員32名」と書かれているが, そんなに乗ったらどうなるかと
心配になるような 小型の船である。
向こう岸から渡ってきた船は 20人足らずの人が乗っていたが, もう満員状態。
32名も乗ったら どうなることやら。
10人ぐらいの乗客が乗り終わると ひとことの挨拶もなしに すぐ動きだす。
船頭さんは ただ 黙々と櫓をこぐだけ。
饒舌なガイドはなくてもいいが, せめて 「ご利用ありがとうございます」 とか
「動きますよ」 など, なにがしかの挨拶があってもいいと思う。
この渡しは 葛飾区か松戸市が 管理・運営しているものと思っていたら,
あとで知ったことだが, 船頭の 杉浦さん という人が 個人で運営しているのだそうだ。
そういう目で見れば なんとなく無愛想な対応も なるほど... と納得できる。
先祖代々この矢切で 渡しの船頭をつとめているそうで,
2年前には 松戸市の市民栄誉賞 を受賞したとか。
現在は 70歳代のオヤジさんと 息子さんが 二人でやっており,
この日は 息子さんが櫓をこいでいた。
対岸の松戸市側に到着。こちらにも 矢切の渡しの石碑がある。
当然のことではあるが, 同じものを説明しているのに 東京側とはかなり違う内容に
なっている。両方を読むと かなり理解が深くなったような気がする。
松戸側は 堤防の内側の空間は ゴルフ場になっている。おみやげを売っている
小さな売店がある他は 何もない。
何をすることもなく, 一緒に船に乗った人たちは 大半が そのまま帰りの船に乗ろうとしている。
このまま帰ってしまうのではつまらないので, 野菊の墓の文学碑とやらを
見ていくことにする。
文学碑は ここから20分ほど歩いた 西蓮寺 というお寺にあるという。
堤防の外側は 一面の畑・畑・畑・・・
堤防下に公衆トイレがある他は, はるか遠くに人家が見えるが, 見事なくらい何もない。
堤防の上には “残したい 日本の音風景 100選”という 石碑が建っている。
どんより曇って あやしい雲行きだったが, 歩きはじめて 5分もしないうちに 雨が降りだした。
土砂降りになると 渡し船が運航中止になりかねないので, 途中で断念。
急いで河原に戻る。
船が止まったら, 鉄道の駅(北総線 矢切駅)まで行けないことはないのだが,
たっぷり 30分は歩かなければならない。
幸い 船のうえでは傘をさすほどのこともなく, 無事 柴又に帰還。
横浜から 1時間半。交通費 片道 約1000円。
天気には恵まれなかったが, のどかな 小旅行だった。
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