ご利益
[98-03-11]
私が宗教が好きになれない理由の一つに「『現世のご利益』を あまりにもムキダシにして迫ってくること」がある。
信じている人にとって幸せなら それでいいのであって, ハタからトヤカク言うことではないのだが, それにしても 寺社巡りをしていると そこの規模や知名度とは不釣り合いな 過度にキラビヤカな所があって《ここの檀家(氏子)は 経済的に大変な思いをしているのではないか》と, ヒトゴトながら心配になる。しかし 難しいことは別にして, 寺や神社を観光客的な目で見ると とても面白い習慣(・・・というか 伝統というか)を伝えている所がある。 自分の願いを叶えてくれる寺(神社)にお参りして それを何か形あるもので 表現しようとすると こういうことになるのだろうか。
私が自分の目で見たいくつかを紹介してみる。
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鎌八幡 大阪市天王寺区 ここは 数日前の新聞で紹介されたので 知っている人も多い思う。
「八幡」というから神社かと思いきや『円珠庵』という 小さな真言宗のお寺。
あまり広くもない境内に 小さな社がある。この後ろ立っている木の幹に 草刈りに使う『鎌』が無数に刺してある。 写真はかなりボケているので はっきり読み取れないが, 柄には「〇〇さんと××さんの縁が切れますように」 というような, かなり物騒な文句も書かれている。 なにしろ 刃物を奉納するのだから 血なまぐさい想像をしてしまい, あまり気持ちのいいものではない。
真新しい鎌から サビだらけになった古いものまで, 全部で100本近くも あるだろうか。エノキの幹に鎌を打ちつける民間信仰は古くからあったそうで, それがやがて「鎌=悪い縁の根を断ち切る」という解釈が広がり, 「縁切り」で注目されてきたのだそうだ。
縁切りというと 私なんぞは, 「縁切り寺」という言葉から 「自分につきまとう悪い男との縁を切りたい」という話を連想するが, どっこい 現代の若い女性はそんな素直な願いごとをしたりしないらしい。
「彼氏が別の女の子へ走っちゃった。あの子との縁を切って」 という願いを込めているものらしい。(寺を訪れる人の8割までが 若い女性だとか)「プライバシー保護のため, 境内での写真撮影はお断り」 という貼り紙があって, 内緒の撮影は落ちついてできず, 写真はすべてピンぼけになってしまった。個人の名前と 生々しい言葉が書かれているので, なるほどプライバシーか...と 一瞬は思ったのだが, これは変だ。 ヒトさまに見られて困るようなことであっても 公開の場に書くからには それなりの覚悟してやったのだろうに。
ちなみに 鎌を打ってもらえるのは 2万円のご祈祷を受けた人に限られる とのことで, 若い女性には500円で書ける絵馬の方が人気だとか。
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安井金比羅宮 京都市東山区 京都は祇園のすぐ近くにある安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)も, いろいろな悪縁を切ってくれる神社。
縁切りは男女関係に限らず,病気・酒・タバコ・勝負事までなんでも効果がある という。縁切り神社となったのは,祭神である崇徳天皇が 国家安泰を願って物を断ったことに由来し, 江戸時代から『断ちもの祈願』の神社で有名になったとか。
悪い人との縁を切って良縁を求める『縁切り・縁結びの碑』には 『祈願書』がい〜っぱい貼り付けられていて, かんじんの石碑が どういう形のものであるか 判別することすらもできない。
この石碑は 中央に丸い穴があいていて, ここをくぐり抜けると 願いがかなうとかで, 若い女性がにぎやかな笑い声をあげながら 穴くぐりをしていた。参拝者は やはり女性が圧倒的に多いようだが, こちらには 「〇〇さんと××さんの縁を切って」という類の ひどい祈願はなくて, もっぱら 自分の悪縁が切れてほしい ということだけが書かれているようなので 少し安心する。
願いのほとんどは恋愛関係だが,ちょっぴり欲張って「金縁」を願うものも あるようだ。
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釘抜地蔵 京都市上京区 石像寺(しゃくぞうじ)というこのお寺に入ると, 本堂の正面に 写真のような不思議な形をした 大きな金属の環が目に入る。 よく見ると 環の中は釘抜きである。
そして 本堂の周囲の壁は ビッシリと「鉄の五寸釘と釘抜き」の絵馬で 埋めつくされている。
『釘』は『苦』に通じるところから, 「2本の釘は人の持ついろいろな“苦しみ”を, 釘抜きは 苦しみを抜きさることを表し, ここの絵馬はその苦しみが体から抜けたことを表現している」 のだそうだ。
釘抜きで苦を抜く「釘抜き地蔵さん」と京都の人たちの信仰を集め, 遠方からも 諸苦・諸悪・諸病を祓ってもらおうと お百度参りの人が多く通うとか。
そして 念願がかなった時には, 釘抜きと釘がついた絵馬を奉納して 7年間ほど掲げておくという。
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