通り抜け

[98-04-28]


hanamino-en
歌って踊って...花見の宴(明石公園にて)
今ごろ桜の話題では あまりに遅すぎるのだが, 去年もモタモタしているうちに 時期はずれになって 桜のことを書きそびれてしまった。 今年も同じ轍を踏むことになりそうなので, 初夏ともいえるこの時期になってしまったが, あえて書くことにした。
時期外れとは言っても 東北・北海道では 今がちょうど見頃の桜も多いようだから, まんざら遅すぎるわけでもないだろう。

ところで, 正直なところ 私は「花見」というのがあまり好きでない。
花見で一番嫌なことは, 桜の木の下で歌ったり踊ったりして 隣のグループに迷惑をかける連中がいること。 傍若無人に酔っぱらって騒ぐヤカラが多いこと などで, その印象が強いため 花見そのものの好きでなくなってしまった。
それに 桜の花は あまり色がなくて淋しい。 どちらかと言えば 桃の花ようにもっと華やかな色の花が好きだ。 ・・・ そうは言っても 花はいい。春が来た! と実感できるところがいい。


 造幣局の通り抜け

zouheikyoku 今年は暖かかったせいか, どこでも桜の花がいつになく早かったようだ。
日本全国 桜の名所はたくさんあって 毎日の新聞には 各地の開花状況が出ているし, JRの駅にも「5分咲き」とか「散りはじめ」などの速報が張り出される。 たいていは 公園や寺や山などだが, 大阪には「造幣局」という地名が出てくる。 関西に来たてのころは お札を作る場所と桜の関係がわからず 不思議でならなかった。

造幣局の桜が毎年新聞などで話題になっても, いわゆる桜の名所の一つにすぎないだろうと思って あまり気にも留めていなかったのだが, 最近「造幣局の桜は一味違う。一見の価値があるよ」と言われて 出掛けてみる気になった。
ちなみに 桜の名所と言われる所に シーズンに出かけたのは初めての経験だ。

造幣局は 大阪駅からでもそれほど遠くはない 旧淀川沿いの一等地にある。 この川の対岸は 桜の宮 という“それらしい”地名。 このあたり一帯は桜の木が多く, 今でもシーズンになると 川沿いにたくさんの屋台が出たりして 賑わうらしい。

私が行った日は, ちょうど日中の気温が 30゚C近くの真夏に近い日で, ラッシュアワーのような混雑の中を 汗だくの花見となった。 Tシャツ一枚の若者もいるし, 冬服をしっかりと着込んで汗を拭いている まだ衣替えの済まない老夫婦もいる。
ここの桜は 110品種 400本あるのだそうで, 大半は遅咲きの八重桜。 ソメイヨシノはわずか 1本しかない。 色も 濃い桃色の品種が多くて 大変美しい。 中には 黄色や黄緑色の花もある。 (花の写真が数枚 こちら にあります。)
広くない通路を 押し合うように見て歩くのは やや興ざめではあるが, 単にゾロゾロと通り抜けるだけ というのがとてもいい。

造幣局の桜は 明治の初めに藤堂藩の蔵屋敷から移植されたもので, 品種が多いだけでなく 他では見られない珍しい里桜が集められているのが特徴。 明治の初めに「造幣局の人間だけがみるのではもったいない。 大阪市民と一緒に楽しもう」ということになり, 満開時の数日間 構内を開放して「通り抜け」が始まった。
以来 115年にわたって続いている行事で, 毎年4月の桜の開花時には 造幣局の構内の全長560mの通路を1週間 開放している。 (造幣局のホームページ から引用)
現代ならとにかく, 大蔵省というお固い役所が 明治初年に よくこのイキなはからいを する気になったものだ。


 明石工場の通り抜け

明石工場の桜も今年は早くて,3月末には咲きはじめて 4月第一週に満開になった。
以前も書いたことがあるが, 明石工場の構内には たくさんの桜の木がある。 赤根川沿いに百数十本, その他構内に数十本あって, もちろん造幣局には はるかに及ばないが なかなか見事な眺めとなる。

折角だから この桜を近隣の人にも楽しんでもらおうと, 2年前から「明石工場の通り抜け」をやっている。
最初の年は 残念ながら気温が低くて, 通り抜けに指定した日曜日には桜が「一分咲き」状態で, 通り抜けた人も 数える程しかいかなかった。
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赤根川沿いの桜
桜がいつ満開になるかを 正確に予測するのは大変難しい。 気象庁の開花予報も あまりアテにならず, 結局「当たるもハッケ」式に やるしかない。 通り抜けを 1日だけに限らず 何日にもわたってやればいいのだが, 人手もないので 現状ではこのやり方以上にうまい方法が見当たらない。

昨年は システムセンタの工事をやっていたため中止。
今年は開花が早いという予報をもとに, 少し早いかなと危ぶみながら 4月5日にした。 結果的には これが大当たり。満開の一歩手前 八分咲きというところだった。 好天にも恵まれて 300名を超える人が 桜を楽しみながら通り抜けていった。

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構内の大きな桜
ところで, 赤根川沿い以外の 構内中央の道路脇などにある桜は枝振りもよく 樹勢もあるのだが, 残念ながら 赤根川沿いの桜は 古木が多い割にあまり勢いがない。 ほとんど花をつけていない木もある。 どうしてこうなるのか, 一度 樹木のドクターに診断してもらいたいと思うのだが, 素人考えでは 川沿いの桜は 根元近くまで道路が迫っていて, 舗装で固められているために 伸びられないのかもしれない。

しだれ桜 ところで 明石工場にある桜は すべて染井吉野だと思っていたのだが, 紅しだれ桜があることを発見した。わずか 2〜3本の まだ若い木があるだけなのだが, 色が大変美しい。この木が大きくなった時が楽しみだ。

明石工場のしだれ桜

 


『通り抜け』にいただいたコメントの一部をご紹介。

【Sさん】
  昔は桜が咲くと新人が徹夜し,その徹夜明け休暇を利用して
  昼過ぎにはビニールシートなど持参で津田山公園(?墓地)へ
  “場所取り”に出掛けたものですが 今は昔のはなしですね。

  雨の降るような寒い日の夕方に「花見」に行き,固形燃料で
  「熱燗」を作って寒さを凌いだなんてこともありました。
  なかなか「花見」の日時の決定は難しいものです。「花」,
  「天候」,「人」等の都合をつけないといけませんので・・・。

  近年は4〜5人くらいのグループが多いためか 夕方になって
  「それっ行こう」と出掛けても場所はあるようです。
【Mさん】
 造幣局の通り抜けは有名で一度訪れてみたいと思っています。
 でも, 凄い混み方なのですね。
 黄色や黄緑色の桜もきれいですね。
 桜と言えば, 一度奈良の吉野山の桜を見に行ったことがあります。
 山一面の桜も素晴らしかったです。

 私も花見の宴会はあまり好きではないのですが、 お花見のお散歩は好きです。
 川崎工場の桜が見事だと思っていましたが, 明石工場の桜もきれいですね
【Rさん】
  この数年ほぼ毎年千鳥ヶ淵、北の丸公園、靖国神社などの桜を見ています。
  今年もよく咲きましたがお天気がいまいちで、一度北の丸公園側から千鳥ヶ
  淵の桜を見ただけでした。
  4〜5年前、素晴らしい年があり、満開で気温が下がり、かつお天気がよかっ
  たという好条件で、三回お花見をしました。土曜日には家内を連れて来た程
  でした。
  千鳥ヶ淵も北の丸も靖国神社も通り抜け、と言えば通り抜けですね。

  私も花見にはあまり関心がなかったのですが、十数年前鶴見の三つ池公園で
  初めて感動しました。地面が暗いほど重なって咲き誇っている桜の枝から、
  真っ白な花びらがヒラヒラとひっきりなしに、音もなく降ってくる場面に遭
  遇したからです。本当に贅沢なひとときを味わいました。

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