ひまわり
[98-08-25]
昨年「ヒマワリがたくさん咲いているところに行ってきた。 壮観だから 一度行ってみたら?」と教えてくれた人がいた。 いかにも暑そうな雰囲気でいささか躊躇したが, なるべく涼しい日を選んで行こうかと タイミングを狙っていた。7月中旬。曇天で 時々パラパラと雨が落ちてくる天気だったが, 直射日光がないため 比較的過ごしやすそうなので, 急いで飛び出した。
目的地は 兵庫県佐用郡南光町。瀬戸内海から30kmほど北に入ったところ。 姫路から JR姫新線に乗って約1時間, 10番目の駅 「播磨徳久(はりまとくさ)」駅で降りる 。
ここ 南光町は『町おこし』の一環として, 8年ほど前から 町の中の休耕田でひまわり栽培をしているそうで, 延べ面積は 26万平米。
最近は 北海道をはじめとして 全国各地で同様のひまわり畑があるそうだが, ひまわりの数が 130万本にもなるここは, 全国でもトップクラスだそうだ。
ユニークなのは, 南北10数キロの町の何か所かに ひまわり畑が点在しているのを利用して, それぞれの種まきの時期を 10日ぐらいずつずらしているため, 7月はじめから8月末まで 場所を移動しながら 順番に花を楽しめるようになっていること。 一面のひまわり。ヒマワリ。・・・ なるほど これは壮観。
「ひまわり園」の看板は余計だし, 入園無料のはずなのに 「整理料」と称して 100円也を徴収されるのは いささか無粋な感じもあるが, まあ 細かいところは目をつぶろう。
よくぞ咲いたり。
ところで, ひまわりという花は「日回り」だから, いつも太陽の方向を向いていて, 東から西に向かって 毎日花の向きを変えている・・・・・・のだと信じていた。
ひまわり畑に行くと もうイッパイの花が 全部一定の方向を向いているので, 「やあ, みなさん 毎日首振り運動ごくろうさん」と 激励の言葉をかけてやりたくなるのだが, これが 大間違いだということを知らされた。
(広辞苑にも『花がまわるという俗説があるが、実際には動かない』と 書いてあった。)太陽の方向を向いているのはツボミの時だけで, 花が開いてしまうと 常に東の方角を向いている のだそうである。
この現象(向日性)は 植物学者の説明を受け売りすると, こういうことだそうである。若いヒマワリでは葉に光が当たると、その光が強いほど 多くの成長ホルモンが葉で合成され, その反対側(影の側)の茎の細胞の 成長を促進する。太陽の側の成長が遅く 反対側の成長が速いため ヒマワリの先端は太陽側を向く。
しかし 花が育って つぼみが開く時期になると 成長が鈍ってくるので, だんだん西側に向く程度が小さくなり, 花が咲いた時点では東向きに固定されてしまう。なぜ そうなるかという仕組みについては まだわかっていないようだが, 実際にヒマワリを育てて観察してみると, つぼみのころ昼間は太陽につれて動き, 夜になると元に戻り始め 日の出の1-2時間前に急に東へ帰る という奇妙な運動をすることがわかったという。
それでは ひまわりを植えた鉢を手で回転させて 反対側に向けたり, 真っ暗な中に置いたりしたらどうなるか?
こういうイジワルな実験をしてみると, 数日間は もとのままの運動を続けるそうである。
このクセには「生物時計が関わっている」という説明もあるそうだが, 「成長ホルモン」の説明は一体どうしてくれるのか, シロートは矛盾を追及したくなる。(^-^)
ところで, ひまわりと言えば 黄色い花がおなじみだが, いろんな種類があるそうで, 写真のような 赤黒い品種も植えられていた。 “ブラッドレッド”という そのものズバリの名前だが, この色が 畑一面に咲いていたら あまり美しくないだろうと思う。 ちなみに この地域の黄色いひまわりの品種名は失念してしまったが, たぶん 「サンリッチレモン」あるいは「太陽」という品種だったと思う。
ひ‐まわり【日回り・向日葵】 (広辞苑より)
キク科の一年草。北アメリカ原産。
茎は長大で剛毛を生じ、高さ1〜2メートルに達する。
夏、直径20センチに達する大形の黄色い頭花を開く。
観賞用とし、また油料作物とし種子から油を採る。
太陽を追って花がまわるという俗説があるが、実際にはほとんど動かない。
- ひまわりは一つの大きな花に見えるが, 実際は非常に小さな花の集合体である。 花びらに見られる部分も 実際は一枚一枚が舌状花と呼ばれる独立した花で, 中央の黒褐色の部分も管状花と呼ばれる小さな花の集まり。
- ひまわりはとても利用価値が高く, 観賞用として楽しむほか, 花びら(舌状花)は黄色の染色に使われ, 種子は良質の油がとれ, 炒ると食べることができる。 茎は紙すきの原料となり, 乾燥させて燃料としても用いられる。 このため 米の減反による転作作物としてひまわりが育てられることも多い。
[98.8.31 追加] 『ひまわり』にいただいたコメントの一部をご紹介。
【Sさんから】 「ひまわり」を読ませていただきました。 子供の頃には田舎で何本かは屋敷に自生しており、 タネを食べた記憶もあります。 現場は壮観でしょう。知りませんでした。
【Tさんから】 すばらしい風景ですね。 夏にはヒマワリが似合いますね。 小学生の頃,夏休みの自由研究でひまわりの観察日記をつけたことを 思い出しました。 (日向で育てた。日陰で育てた...結果はあまりよく覚えないですが) 家の近くにもひまわりが咲いていますが,花の向きまでは気にして みたことないですねぇ〜 私はいつも一定方向に向いて咲いているものだと思いました。 今年もヒマワリの時期はおわり,リンドウやススキの季節となりましたね。自分の家でひまわりを育てた経験のある人は少なくないと思います。
【Mさんから】 私も、今年は家の庭で、ひまわりを数本、種から植えて育てました。 それで、初めて知ったのですが、種類により、丈が伸びない種類もあり、 鉢植え用と一般用があるようです、短い種類は30センチ〜50センチぐらいで、 長い種類は1メートル60センチぐらいまで育ちました。 長い方はあまりの大きさに、自分の庭には不釣り合いで、これからは背丈の 低い種類にしようと思っています。
我が家でも 子供が小学生のころ, ひまわりを植えたことがあります。
どんどん大きくなって 大人の背よりも高くなってしまい, 花を観察するには 脚立が必要なほど巨大になりました。 最後に 子供が種を採ろうとしても手が届かないので, ノコギリで切り倒して ようやく目的を達した覚えがあります。
その経験から 翌年は 矮性のひまわりを植えたのですが, 今度は小さすぎて, 前年の立派な花をイメージしていたため, あまりに貧弱で 興味がわかず, それっきり我が家のひまわり熱は冷めてしまいました。
黄色以外の変わった色のひまわりは いろいろあるようですが, どれも「これがヒマワリ?」という感じをもつものが多いようです。
【Tさんから】 いつもいつも新しい話題が出てきて楽しみです。小川さんの好奇心の桁はずれた 大きさに圧倒されます。 今回のひまわりの件では私の強烈な印象は、嫁さんと結婚**周年でスペインに 行った時の事があります。とにもかくにも見渡せるところまで、全てひまわりが 「生えていた」というのがあります。しかも日本のひまわりは1本の株に幾つも の花をつけているのを見慣れていましたが、今回の写真にもあるように、基本的 には花が一つであったのも驚きでした。 今回アカいひまわりもあるというのでアレレそんなのもありだったかという感じ です。 あと花はいつも太陽に向いているというのは嘘で・・というのはNHKテレビ で、日曜日の夜7時20分から「日本人の質問」で前に取り上げられていたの を思い出しました。
【Fさんから】 『ひまわり』拝見しました。 私は常々,一面に咲くひまわりが見たいと思っていました。 それは映画のワンシーンで一面に咲くひまわりを見たからですが 近くにこんな場所があるとは知りませんでした。 やはりひまわりは黄色に限る・・と思うのは私だけでしょうか。
ちょっと 変わった色のヒマワリの写真を集めてみました。
左の赤いひまわりは「チトニア」という種類の一つだそうで, 最近 北海道の一部地域で この花を広めようという運動 をやっているようです。 (あかいひまわり100万本の会)
真ん中のは「ココア」という品種で, 名前のとおり花全体がココア色 というか 黒っぽい色ををしています。 お世辞にも美しいとは言いにくい色です。
右側は「ひめひまわり」の一種で, 白い花弁に黄色が混じっています。 一見すると 菊かコスモスのようです。ひまわりは 菊科の植物なので, 中間的な品種なのかもしれません。
【Yさんから】 「ひまわり」見せていただきました。 高校くらいの時に「ひまわり」と言う洋画を見に 行った気がしますが その画面を思い出しました。 日本には新潟とか富山砺波の「チューリップ」とか 富良野の「ラベンダー」(だったかな?)とか 広大な 畑に 同じ花が植えられるケースが多いようですね。 確か チューリップは球根をとるための畑を観光用に 使っているのだと思いましたが ひまわりは 夏が終わったら 種をとるのでしょうか?
【Mさんから】 ヒマワリの効用というか、ヒマワリが栽培される理由がわかりました。 昔、甲府(山梨県)へ桃狩り(だったと思う?)に行ったときに、 ヒマワリが一面に咲いているのを見たことがあります。 その時は理由が良く分からなかったのですが、 これでスッキリしました。どこでもそうしているのかどうかは分かりませんが, 北海道の北竜町というところでは 350万本ものひまわりが植えられていて, このタネは油や食用に加工されているそうです。
単に鑑賞用だけに 100万本を超える花を栽培するのは, もったいないですね。いくら観光客があつまったとしても ほとんど金は落としてくれないですから...(^^;)
[98.9.7追加]
【Sさんから】 一度私も鑑賞に行きたいなーと思います。不躾ですが時期的には何時ごろかから 何時ごろ迄 鑑賞出来るのでしょうか。 出来たら次回更新される時に期間とか見頃時期等が分かればなーと思いますが よろしくお願いします。もう時期が過ぎてしまったので あえて書かなかったのですが, 他からもリクエストがあったので 来年の夏に備えて メモっておきます。
花の見頃は だいたい 7月中旬から8月下旬までのようです。
年によって多少時期がずれるらしいので, 詳しくは シーズン直前に 町役場に問い合わせるのがいいと思います。 (南光町の町役場の電話は 0790-78-0110)
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