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1月下旬にベトナムに行ってきた。
わずか 2〜3日の滞在なので ほんの上っ面だけを見たにすぎないが,
ファーストインプレッションを書いてみたい。
社会主義国のベトナムも, ご他聞にもれず経済は停滞しているようだが,
庶民の生活は 猛烈なバイタリティにあふれる国 ・・・
というのが全体の印象だった。
【美しく汚い町】
ベトナム(ホーチミン市)の第一印象は 緑の多い"美しい町"だった。
高層ビルの上から見下ろしたホーチミン市は, 新しいビルと 昔ながらの町並みが
渾然一体となっている 複雑な都市だが, 非常に緑が多いのが特徴だと思われた。
緑が多いのは フランス統治時代の名残りということで,
公園など公共の場所の樹木や街路樹などは 大きく繁って,
非常に見栄えがいい。
そんなことを現地の人に言ったら, 「とんでもない, こんな汚い町は嫌いだ」
と言われてしまった。
たしかに 遠目にはきれいに見える街だが,
こまかく見ていくと かなり汚い部分も多い。
特に 川が汚い。水も汚いし 川岸はヘドロで真っ黒。
道路脇には いたるところに 屋台 (というのか 路傍の食べ物屋) があり,
歩道上に簡単な椅子とテーブルを置いて 食事を提供している。
見ていると, 残飯を路上に バシャッと捨てたりしている。
あとで 水を流して掃除するらしいのだが, 歩道と車道の間には
めん類のカスがこびりついていたりする。
建物は 欧風のしゃれた建物の隣に 掘っ建て小屋風の建物が並んでいたりする。
要するに 戦後間もなくの 東京・大阪の町を連想すればいいだろう。
・・・ いや それよりはずっときれいだと思うが。
【白い街路樹】 町を歩いていて不思議に思ったのは, すべての街路樹の下 1.5メートルぐらいのところが 白いペンキで塗りつぶされていることである。 例外もあるだろうと思って 車で移動する間もずっと見ていたのだが, 少なくとも ホーチミン市内で私が見た範囲では 一本の例外もなかった。 まだ植えたばかりの小さな街路樹でも 下が白く塗られている。
ほとんどの場合は 街路樹だけが白いのだが, 場所によっては 電柱までが
同じ高さで白く塗られていたりする。
これはどういう理由なのか (日本人に)聞いてみたのだが,
「車道と歩道をはっきり見分けられるようにしているのではないか」とか
「樹木を(車の衝突から)保護するために 夜光塗料を塗っているのではないか」
などという あいまいな返事ばかりで,
あまり納得のいく説明を聞くことができなかった。
あれは どういう目的なのだろう? いまだに不思議である。
【バイク】
ベトナムに着いて 強烈な印象を受けたのは, バイクの多さだった。
バイクが多いのは アジア各国に共通した現象だ ということは,
知識としては知っていたはずなだが,
数の多さと 猛烈な運転ぶりには圧倒されてしまった。
右端に寄って走るならまだしも(ベトナムは右側通行),
そんな遠慮など一切していない。どんどん中央に寄ってくる。
平気でセンターラインオーバーで走っていく。
後ろを見ることはしない。自分は 前の車にぶつけないために
全神経を使っているのだから, 後ろのことは 後ろの車が心配しろ...
というのがルールなのかもしれない。
交差点に近づくと もっとすごい。左折するバイクは どんどんセンターライン に近づいてきて, 斜めに横切っていく。 信号のある交差点は少ないが, 信号があったって少しも変わらない。
目の前に 道一杯に広がってバイクが走っていて, こちらの車に接触せんばかりの
近さに寄ってくるのを見ると, 思わず足に力が入る。
車の数は少ないが 車の方がバイクに遠慮する ということもない。
パ〜パ〜パ〜 とやかましくクラクションを鳴らしながら
猛烈なスピードで走り抜ける。こんな状態で よく事故が起きないものだと
感心する。
バイクのメーカーは たまにスズキとかカワサキなどを見かけるが,
ほとんどが ホンダ。新しいのも 古くてボロボロのもある。
ホンダはベトナムでもバイクを作っているとのことだが,
日本製でなければ人気がないのだと聞いた。
ベトナム製は故障が多い という理由で。
バイクに交じって 自転車も走っている。全体の2-3割ぐらいだろうか。 白いアオザイを着た女子高生も負けずに自転車で走る。
この道路を歩いて横断するのは とても怖い。バイクも車も
切れ目なく走ってくるので, 歩き出すタイミングが大変難しい。
少しは歩行者のために譲ってくれるか などと期待するのは無理というものだ。
一方向の流れをようやくかわして, 今度はセンターライン上で反対側の
流れの切れ目を待つ。この間 自分の前だけでなく, 後ろ側も同方向に
走っていくバイクがいる。センターラインオーバーしている。怖い。
現地の人はどうするかと見ていると, 平気で足を踏み出すようだ。
「ぶつかるのはお前の方が悪い」という調子で, ただし ゆっくりと
歩いていく。バイクは 歩行者を器用によけながら 走り抜けていく。
【猫どし】
ベトナムには 日本と同様に 十二支がある。
今年は 何の年だ? と聞いたら 「ネコドシ」だという返事だった。
一つずつ確認していったら, ネコ以外は 日本とほぼ同じで, 順番も同じ。
ネズミ, ウシ, トラ, ネコ, ドラゴン, ヘビ, ウマ, ヒツジ, サル, トリ, イヌ, ブタ
日本では 最後が イノシシ なのだが, 猪は野生のブタなのだから 同じことだろう。
ベトナムの十二支の由来は知らないが, 当然 中国から入ってきた文化なのだろう。
それが こんな風にローカルに変化してしまうのが面白い。
ベトナムの会社から カレンダーをもらってきた。
毎年 従業員全員に配るのだそうだ。
2ヵ月ずつ 6枚の ベトナムの風景を印刷した大きなカレンダーだが,
これの各ページには 猫の写真が印刷されている。
来年のカレンダーには きっと龍の写真?が印刷されるのだろう。
【フルーツ】
幸運なことに 私が行った時期は,
ちょうどベトナムで果物がおいしい季節にあたったらしい。
ホテルには色とりどりの果物が置かれていた。
オレンジ・バナナ・パパイヤ・タンロン そして 通称“オッパイフルーツ”と
(日本人の間で) 呼ばれる果物。
どれも素晴らしくおいしい。
“タンロン”というのは, その場での日本人の説明によると, サボテンの一種 (「月下美人」だと言っていたが 本当かな?) の実だそうで, 外側は真っ赤だが 切ると白いサクサクした果肉に 小さな黒い種が交じった, ちょうどゴマシオを ふったオニギリのように見える。あっさりして やや酸っぱみのある甘さ。 キウイに似た味 といえばいいだろうか。
“オッパイフルーツ”は 現地での名前“ヴースア”。
これは「ミルクの乳房」というような意味らしいから,
必ずしも 日本人男性がおもしろ半分につけた名前ではないようだ。
手触りが ほどよく柔らかいこと, 果汁がミルクのように白いこと などが
女性の乳房を連想させるので オッパイフルーツなのだろう。
やや緑がかった黄色い皮で 夏みかんぐらいの大きさ。
2月から4月ごろまでしか出回らないというから,
私はかなり運がよかったことになる。
手でほどよくもんで柔らかくしておいてから てっぺんをナイフで水平に切ると,
白くて甘い果汁があふれている。スプーンで柔らかい実をすくって食べると
これがうまい。大きな黒い種がいくつかある。
オレンジのように4つ切りにする食べ方もあるが, この場合は 果汁がこぼれる
ので 事前に揉んではいけない。
果物屋の店先には 実にいろんな種類のフルーツが並んでいる。
ニャン(竜眼), マンゴ, マンゴスチン, グアバ, ドリアン,
ジャックフルーツ, カスタードアップル, ドラゴンフルーツ,
ライチ, パパイヤ, ザボンのようなブォイ,チョムチョム(ランブータン) ...
どれも 南方系のくだものだから, やわらかく甘いものばかり。
全部食べてみたかったのだが, 時間の制約もあって 果たせなかった。
このまま帰国しては後悔すると思ったので, オッパイフルーツを数個 おみやげ
として買った。値段は全部でわずか 1ドル。ところが
「日本入国の時に検疫で持ち込み不許可になるから
持ち帰ることは不可能」とのこと。
う〜ん 残念。何かいい方法はないかと思案したが... (駄目なものはダメ!)
【シャコ】
ベトナムで出合った 最もユニークな食べ物といえば
「シャコ」だろう。シャコといえば 東京湾でも瀬戸内海でも取れる
寿司のネタにもなる あのシャコである。
何がユニークかというと, その大きさにある。
日本で食べるシャコは, せいぜい10センチぐらいの大きさで,
普通 我々が目にするのは 皮をむいて茹でてあるため, どんな形を
して水中にいるのかは あまり知られていない。
たまに 生きたまま売られていることもあるが, エビやカニのような
甲殻類であることすら 知る人は少ないかもしれない。
ところが ベトナムで食べるシャコは, 何と 30センチを超える 大きさで, 非常に固いカラがついている。これが そのままの形で ゆでられたり揚げられたりして テーブルに出てくる。大きな皿から はみ出すような大きさである。 もちろん殻のままかぶりつくわけに行かないから, 適当な大きさに ブツ切りされていて, これをほじくって食べるわけである。 味は 海老のようで, なかなかうまい。クセになりそうだ。
どうして こんな巨大なシャコがいるのか分からないが, 恐らく
日本でとれるシャコとは 種類が違うのだろう。
ちなみにベトナム語では ××ガニ(正確な名前は覚えられなかった)と
カニの仲間として扱われているとのこと。
また辞書を引くと, 英語でシャコは Mantis Shrimp (カマキリエビ) とあり,
海老の仲間になっている。
いずれの名前も 形から来ているのだろうが, 物の名前というのは
その国の文化を表しているようで 面白い。
ベトナム料理店で, 一緒に行ってくれた人がノコノコとキッチンまで
行って注文してくれた。彼もベトナム語で何と言うのか知らなかったため,
シャコの絵を描いて頼んだのだそうだ。
しかし その日は 店にシャコが入っていなかったため,
ワザワザ買い出しに行って 料理してくれた。
ベトナム人にとっても このシャコは 普段あまり口にできない
高級な食材なのかもしれない。
【ベトナム航空】
日本からベトナム直行のヒコーキは, JALとベトナム航空(VN)の共同運行便が
ほぼ毎日往復している。
ただし 1日おきに JALの運行便(JALの機体)とベトナム航空の運行(VNの機体)が
交互に出ている。
ベトナムに頻繁に出張している人から受けた忠告は 「必ず JALの運行便に乗れ」
というものだった。
しかし 出発・帰国の日は 必ずしも自分の意思はかりでは決められない事情がある。
私の場合は運悪く 往復共 VN便になってしまった。
VN便だと何がよくないか。実際に乗ってみてよくわかった。
まず 機体が悪い。JALは エアバス(?), VNは B767。
どちらに乗ってもさほど差があるとは思えなかったのだが,
実際に経験してみてわかった。VN機は 座席がお粗末。
まず, 座席のカバーが非常に簡単な構造で ただの袋になっているだけ。 テーブルの所は穴があいているだけで, その縁の部分はマジックテープで押さえているだけ。 おまけに 肝心のマジックテープは使い古されてバカになっており, どの座席も だらしなく デレ〜っと垂れ下がり イスの内部の薄汚い構造物が アラワに見えている。 あちこちの座席では, テーブルをおさえるノッチが壊れており, 代わりに臨時に 外側から2本のマジックテープで押さえているが, それも半分バカになっているため, 時々 バタン! と閉めておいたテーブルが 飛び出してくる始末。
座席の欠陥は もう一つあって,後ろの人が 座席ポケットに物を出し入れするたびに, こちらの背中にモゾモゾとあたること。 後ろの人が足を組んで座席に触れたりすると, それが背中にゴリゴリと当たって 不愉快極まりない。 つまり 座席の背中が 布一枚?しかないらしいのだ。 おかげで 寝ている間も 後ろの人が動くたびに 目が覚めてしまう。 うるさ〜い!! と叫んでしまいそうだった。
VN機は 当然ながら ベトナム人スチュワーデスがメイン。共同運行だから
JAL所属の日本人スチュワーデスも 1〜2人乗っているが, 主たる持ち場は
エクゼクティブの方で, エコノミー席に姿を現すことはほとんどない。
別に ベトナム人だからいけないというつもりはないが,
とにかく社会主義国というお国柄のせいか, サービス精神はカケラもない。
食事の時でも ただ配るだけが仕事と心得ているようだ。
お茶を頼めば コーヒーが来るし, 紅茶を頼んだつもりが中国茶が来て
「違う」と言えば, 持ち帰ったまま 代わりを持ってくることもない。
何か忙しくしているのかと思えば そうでもなくて,トイレに立ったときに覗いてみると,
おしゃべりに興じている。彼女らにしてみれば, マニュアル通りに動いているのだろう。
ベトナム社会では 「平等」であることが 最も大切なことだというから,
余計なサービスをするのは 平等の精神に反するのかもしれない。
ベトナムから関西国際空港に着き, そのまま JAL国内便で羽田に行った。
今度は ハラワタが見えない座席だったし, スチュワーデスの笑顔も見られて
不思議な安心感があった。
決してベトナムの悪口を書くのが目的ではないが,
正直な感想を述べておくのも必要なことだろう。
「VNに乗って失敗だった」という印象を持たれるのは
決して彼らの望むところではないはずだから。
しかし 急速に変化している国だから, こういう状況が改善されるには
それほど時間がかからないのだろう。