2001.4.16 「だるま市」のコメントページを追加しました |
逆に最近は おみやげなどの形で海外に出ていく数もかなりあるようで, イギリスのサッチャー元首相が だるまの目を入れている写真を見たこともある。
赤く丸い胴体に丸い頭, 手足がなくて ヒゲと眉毛が立派なだるまのことは, 広辞苑に こう書かれている。
だるま 【達磨】 達磨大師の坐禅した姿に模した張子の玩具。 普通,顔面以外の部分を赤く塗り,底を重くして, 倒してもすぐ真直に立つように作る。 開運の縁起物とし,願いごとがかなった時に目玉を描き入れるならわしがある。 |
もともと "だるま" というのは インドの坊さん, Bodhidharma = 菩提達磨 のこと。
達磨大師とも呼ばれ, 禅宗の始祖とも言われる。
中国に渡って 梁の武帝にあつく迎えられた。
達磨大師には 伝説的な言い伝えが多く, 最も有名なのが『面壁九年』。
中国・嵩山の少林寺で 壁に向かって9年間座禅をして 悟りを開いた というもの。
だるま市は, 神社やお寺の縁日などで 縁起物のだるまを売る市で,
正月に開かれることが多い。
多くは 東北から関東地方にかけての各地と 中部地方の一部で開かれているが,
なぜか関西では だるま市のことをあまり聞かない。
毎年 各地に定例で開かれる だるま市 はたくさんあるが,
そのうち代表的と思われるものを列挙してみる。
秋田市 | 星辻だるま祭り | 4/12〜13 |
福島県白河市 | 白河だるま市 | 2/11 |
水戸市 | 市杵姫神社 | 1/8 |
群馬県桐生市 | 普門寺 | 成人の日 |
群馬県高崎市 | 少林山達磨寺 | 1/6〜7 |
埼玉県川越市 | 喜多院 | 1/3日 |
東京都調布市 | 深大寺だるま市 | 3/3〜4 |
東京都八王子市 | 子安神社だるま市 | 1/9〜10 |
東京都青梅市 | 住吉神社だるま市 | 1/12 |
神奈川県茅ヶ崎 | 第六天神社 | 12/27 |
静岡県富士市 | 毘沙門天大祭 | 1/7〜9 |
愛知県豊川市 | 豊川稲荷 | 1/1〜15 |
高崎・少林山 |
江戸時代の中期, 関東では 浅間山の噴火や "天明の飢饉"が起きるなど
貧困にあえぐ暗い世相であったため, 農民救済のため 少林寺の住職が
寺に残されていた 達磨大師の座禅する図 をもとに
だるま像を作ることを思いつき, 農民たちの副業として
張り子のだるまを作らせて 縁起物として広めた。
最初は 達磨大師が座禅を組んでいるリアルな姿だったが,
時代と共に形が変わって「繭型だるま」になり,
現在の「高崎の福だるま」として根付いたと言われている。
現在 日本全国のだるまの生産量は年間 200万個前後もあるらしいが,
そのうちの8割 (150〜160万個)は高崎の 100軒ほどのメーカー(家内工業)
で作られているという。
高崎以外に福だるまを作っている所は 白河・越谷など いくつかあるようだが,
量的には高崎の1割以下らしい。
おおまかに言って 日本中の20軒に1軒の家に だるまがある計算になる。
信じられない数である。
だるまなんて 普通デパートやスーパーで売られていないので,
どうしてこれだけの数が生産され 買われていくのかというと,
どうも『だるま市』を通して流通するものらしい。
若い頃には だるま市なんて まるで関心がなかったのに, わざわざ
出掛けてみようという気になるのは, やはり年をとったからか...(笑)
今年1月6日に 高崎まで出掛けてみた。ちなみに 横浜から高崎まで
ざっと3時間かかる。
日本一のだるま市が開催されているのだから 高崎駅は相当混雑するかと思ったが,
予想に反して それらしい人の姿は見えない。
寺に近づくと 途中に広い駐車場があって, 道路はバスとタクシー以外は
寺の入口までは入れない仕組みになっている。
聞くと この縁日は 6日の正午から7日の正午までの開催だそうで,
夜になってからの方が賑わうという。その間 車は入れないのだそうだ。
私が行った時は ちょうど初日の正午すぎ,つまり祭が始まってすぐの時間帯だった。
山門から急な石段をゼーゼー言いながら登った山の上に本堂がある。
ここに有名な達磨大師の像が置かれているが, 等身大よりやや大きめの像が
とてもリアルなので, 前に座っている坊さんも もう一体のダルマかと錯覚させる。
なかなかいい風景である。
本堂の周辺に露店がズラ〜っと並んでいる。半分ぐらいが だるまを売っているが,
残りは 招き猫だとか 干支の土鈴などの置物が並べられている。
肝心のダルマは 大小いろんなサイズがあって. 一番小さい可愛いものは 300円。 一番大きいのは ウン万円という。 正札が書いてあるわけではないので, 買う人は値段交渉から始まる。 といっても おおよその相場というものがあるらしくて, あんまり極端な値段が出ている様子はない。
まだ 店を開いて間がないためか, 客は少なく, 「どんどん売れている」状態には
見えない。小型のダルマを買う客がボチボチ見られる程度。ほとんどは
ひやかし。
やはり噂通り 夜にならないと本当の活気はでないのだろう。
私も せっかくここまで来たのだから...と, ***円のだるまを買ってみた。
さて, どんな願をかけたものか。世界平和と家内安全 でも願っておこうか...(笑)
だるまの“目を入れる”という風習はおもしろい。
最初のころ だるまは 両眼とも見開いていたそうだが,
起き上がりこぼしの七転八起にあやかって,
養蚕農家が 蚕の目覚め(何回も脱皮すること)がよくなるよう
願いを込めて片目(向かって右)に墨を入れ,
やがて蚕が良い繭を作ると 残った片目にも墨を入れて
お祝いする という習慣ができ, これが始まりと言われている。
現代は だるまに目を入れるのは 選挙で当選した時のお祝いでおなじみの風景だが, 企業の中でも 片目のダルマを置いているところは 決して少なくないようで, 結構日常生活の中に入り込んでいるようだ。 (だから 毎年 200万個ものだるまが売れているのだろう。)
というわけで わが家のだるまも, 今は片目の状態で 福が来るのを待っている。
東京・深大寺 |
その 2番目に名前を挙げられた深大寺は, 奈良時代(733年)に創建され,
関東地方で最も古い寺の一つと言われる。
場所は 東京都調布市。都立神代植物公園に隣接する。
毎年3月3日〜4日にかけて 厄除け元三大師大祭 があり,
この時 だるま市が開催される。
さすがに有名なだるま市で 猛烈な混雑。山門から参道を見おろすと 人 ひと ・・・
門前は 名物“深大寺そば”を食べさせる店が およそ30軒あるそうで 賑わっている。
本堂は現在 改修工事中で 建物を見ることができなかったが,
参道から境内にかけて だるまの露店がすきまなく並んでいる。
これだけたくさんのだるまは どこで作られるのだろうか。
店の人に聞いてみたら やはり ほとんどは高崎から来ているという。
高崎が市場の80%をにぎっているのだから 当然だろう。
“だるまは赤い”というイメージが強いが, 赤くないだるまも たくさんある。
青, 空色, 緑, 黄色, ピンク, 紫, 白, 黒, 金色 ・・・
それぞれの色に 金運とか恋愛運とかが こじつけられている。
最近の風水ブームで テレビで紹介されてから,
黄色のダルマが 金運 で大変な人気になっているそうだ。
その他 珍しいだるまをいくつか紹介 (下の写真)
ぼんやり見ている時には気がつかなかったが, だるまの顔をよく見ると いろいろな模様が描かれていることがわかった。
そもそも 福だるまの顔は, 眉が鶴を 頬ヒゲが亀を表しており,
縁起のよい顔が特徴だそうだ。
この他に アゴヒゲが 松, 胴回りの模様と 鼻の穴を 竹と梅 に見立てる
こともあるとか。
たくさん撮った写真から 顔がはっきりしているものを並べてみよう。